◆株仲間の解散◆
出典:『天保法制』
a菱垣廻船積問屋共より是迄年々冥加上納金致し来リ候処、問屋共不正の趣も相聞え候ニ付き、以来上納に及ばず候。尤向後右仲間株札ハ勿論、此外共都て問屋仲間并びに組合抔と唱候儀ハ、相成らず候間其の段申し渡すべく候。
一 右ニ付てハ、是迄b右船に積み来リ候諸品ハ勿論、都て何国より出候何品ニても、c素人直売買勝手次第たるべく候。且又諸家国産類、其の外惣て江戸表え相廻し候品ニも、問屋に限らず、銘々出入のもの共、引受け売り捌き候儀も、是又勝手次第ニ候間、其の段申渡さるべく候。
(d天保十二年)十二月
注釈: a:1813年、江戸の十組問屋は杉本茂十郎により菱垣廻船積問屋仲間に再編成された。 b:菱垣廻船。 c:仲間に属さない商人・在郷商人をさす。 d:1841年。
◆人返しの法◆
出典:『牧民金鑑』
在方の者当地へ出居、馴れ候二随ひ、故郷ニ立戻候念慮を絶し、其の儘a人別ニ加り候者年を追い相増し、在方人別相減候趣相聞へ、然るべからさる儀ニ付、……帰郷の御沙汰ニハ及ばれず、以後、取締方左の通り仰せ出され候。
一 在方のもの身上相仕舞、江戸人別ニ入候儀、自今以後決して相成らず候。
一 近年b御府内江入り込み、裏店借受け居り候者ニハ、妻子等もこれ無く、一期住み同様の者も之有るべし。左様の類は早々村方へ呼戻し申すべき事。
注釈: a:江戸時代の戸籍簿、人別帳のこと。享保期以降は全国的な人口調査の一環として6年毎に作成。 b:江戸。
◆上知令◆
出典:『天保法制』
a御料所の内薄地多く、御収納免合相劣り、……当時御料所より私領の方b高免の土地多く之有り候ハ、不都合の儀と存じ奉り候。……幸い此度江戸 大坂最寄御取締りとして上知仰せ付けられ候。右領分、其余の飛地の領分ニも高免の場所もこれ有り、御沙汰次第差し上ケ、代知の儀、如何様ニも苦しからず候得共、c三ツ五分より宜敷き場所ニては、折角上知相願に候詮之無く候間、御定の通り三ツ五分ニ過きざる土地下され候得ば、有難く安心仕るべく候。
注釈: a:幕府の直轄地である天領。 b:年貢課税率が高いこと。 c:幕府が旗本に領地を渡す際の年貢課税率は35%であった。
◆武士の困窮◆
出典:『世事見聞録』
なべて武家は大家も小家も困窮し、別て小禄なるは身体甚だ見苦しく、或いは父祖より持ち伝へたる武具、及び或いは先祖の懸命の地に入りし時の武器、そのほか家に取りて大切の品をも心なく売り払い、又a拝領の品をも厭はず質物に入れ、或いは売物にもし、また御番の往返り、他行の節、馬に乗りしも止め、鑓を持たせしを略し、侍若党連れたるも省き、……。如何ニも当世は、武辺と律義ハ世の禁物也。
注釈: a:主君から賜った品。 ★史料の筆者は武陽隠士。
◆百姓一揆◆
出典:『秘本玉くしげ』
百姓町人大勢徒党して、強訴濫放することは、昔は治平の世には、をさゝゝうけ給はり及ばぬ事也。a近世に成りても、先年はいと稀なることなりしに、b近年は年々所々に之有て、めづらしからぬ事になれり。……いづれも困窮にせまりて、せん方なきより起こるとはいへども、詮ずる所上を恐れさるより起れり、……抑此事の起るを考ふるに、いづれも下の非はなくして、皆上の非なるよりおこれり。今の世百姓町人の心もあしく成りたりとはいへ共、能々堪がたきに至らざれば、此事はおこる物にあらず。
注釈: a:徳川の世。 b:この史料が記された天明期。 ★史料の筆者は本居宣長。
