早稲田大学日本史過去問(政経02)・昭和の大衆文学と思想弾圧事件


W 次の文章(1)〜(3)を読み、下記の問いA、Bに答えよ。
 
(1) 「作家としてのX氏には一種の歴史的感覚がある。鞍馬天狗の時代が徳川から明治への過渡期にあたる維新前後であるのは、多くの歴史小説に共通のことであるが、X氏がとくにこの時代に興味を持たれるのには理由があるように思えてならない。……過去と未来の現在における葛藤そのものが、そして次第にあらはになつてゆく歴史の方向そのものが、X氏の関心を惹くのではなかろうか。X氏が現代を描く場合にもこの歴史的感覚は生き生きと動いてゐる。」(木村健康「解説論文」『現代日本文学全集 80』)
 
(2) 「たたかひは創造の父、文化の母である。試練の個人に於ける、競争の国家に於ける、斉しく夫々の生命の生成発展、文化創造の動機であり刺激である。……『国防』は国家生成発展の基本的活力の作用である。従つて国家の全活力を最大限度に発揚せしむる如く、国家及社会を組織し、運営することが、国防国策の眼目でなければならぬ。……」(『国防の本義と其強化の提唱』 原文の傍点は省略)
 
(3) 「なほ、神代史の諸説が一つの主張であつて歴史的事実を語るもので無いといふことについて、一言の蛇足を加えて置かう。神代史に民族としての、もしくは国民としての、我々の祖先の閲歴が毫も現はれてゐないといふことは最早いふに及ぶまい……要するに神代史は初から国家が我が皇室の下に統一せられてゐるものとして、其の基礎の上にあの主張をしてゐるのである。神代史の性質は此の点からもまた推知せられるのではあるまいか。」(『神代史の研究』)
 
A 下記の問い1〜8に対する答えを、それぞれ あ〜え から選び、マーク解答用紙に記せ。
 
1 史料(1)で論及されたX氏には、フランスのドレフュス事件を描いた『パリ燃ゆ』などの作品もある。このX氏は誰か。
 あ 松本清張   い 永井荷風   う 大佛次郎   え 五木寛之
 
2 史料(1)で論及された『鞍馬天狗』と同時期、大衆文学の世界で持てはやされた作品には、『宮本武蔵』や『富士に立つ影』などがあるが、『丹下左膳』で人気を博した作家は誰か。
 あ 司馬遼太郎   い 吉川英治   う 子母沢寛   え 林不忘
 
3 大衆文学とならんで純文学やプロレタリア文学の世界にも傑作が生まれたが、全日本無産者芸術連盟(ナップ)の機関紙『戦旗』などで活躍した中野重治の作品はどれか。
 あ 『生活の探求』   い 『村の家』   う 『太陽のない街』   え 『蟹工船』
 
4 史料(2)は、国民に国防観念の再検討を促し、列強の重圧にいかに対処するかを説いた小冊子で、1934年に作成されたが、これを作成したのはどこか。
 あ 大本営政府連絡会議   い 桜会   う 関東軍   え 陸軍省
 
5 史料(2)の作成者の観念からは、国民生活の安定や戦時経済の確立などとともに思想戦=国民の精神統制が重要だとされたが、すでに1933年には京都帝国大学教授がその自由主義的な憲法学説ゆえに文部省によって休職処分にされている。それは誰か。
 あ 滝川幸辰   い 森戸辰男   う 河上肇   え 山本宣治
 
6 1935年には天皇機関説が問題となり、内閣は国体明徴を声明することを余儀なくされるが、このときの総理大臣は誰か。
 あ 近衛文麿   い 斎藤実   う 岡田啓介   え 広田弘毅
 
7 史料(3)が発禁になる前の1938年、これまで5 ・15事件や2 ・26事件に鋭い批判を加えてきた自由主義的な経済学者のファシズム批判の書が当局の忌諱にふれ、翌39年、同人は起訴された。それは誰か。
 あ 河合栄治郎   い 大内兵衛   う 矢内原忠雄   え 有沢広巳
 
8 史料(3)の著者よりかなり前、1891年に論文「神道は祭天の古俗」を発表した学者が、神道家らによって攻撃され、翌92年その職を辞した。それは誰か。
 あ 吉野作造   い 久米邦武   う 上杉慎吉   え 穂積八束
 
B 下記の問い1〜3の答えを記述解答用紙に漢字で記せ。
 
1 史料(1)で論及された『鞍馬天狗』と同様、大衆文学として広く読まれた作品に『銭形平次捕物控』があるが、その作家は誰か。
2 史料(2)が配布されたこの年、満州国は帝制を実施したが、このとき駐満大使と関東庁長官を兼任することになったポストは何か。
3 史料(3)の著者は誰か。
 
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